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犬のきなこさん、こんにちは。
文理の数学の中の人です。
土日をはさんで、お返事が遅れてしまってすみません。
説明する問題を、言葉にするのは難しいですよね。
実際のところ、数学の説明問題は、
よくよく考えだすとかなりややこしいことを、
問題集などでは省略して書いていることが多いです。
すこし気合が入りすぎて、ものすごい長い回答になってしまいましたが、
以下、ご確認ください。
よくわからないところがあったら、改めて掲示板に質問してくださいね。
=====================
すこしネタバレになりますが、中2の後半で図形について学習するとき、
この単元のような「どうしてこうなるのかを説明しなさい」「こうなることを証明しなさい」という問題がたくさん出てきます。
なので、今のうちに、数学での説明のしかたに慣れておきましょう。
さて、数学の問題で説明をすることは、
例えば、ふだんの会話で人に何かを説明するようなときとは、すこし勝手が違います。
数学では、
「言葉で説明をする」
というより
「式で説明をする」
というほうがイメージが近いかもしれません。
ひとつ、例題を使って、解説しましょう。
例題:「3の倍数どうしの和は、3の倍数になるわけを説明しなさい。」
…一見すると当たり前のことのようにも思えますね。
まず、上のことを実際の数を使って確かめてみると、
3+6=9
15+27=42
303+45=348
などのように、たしかに「正しそう」ということは検討がつきます。
ただし、数学の場合では、どんな場合でも正しいことを説明しなければなりません。
「3の倍数」にあたる数だけでも、
3,6,9,12,….,999,1002,1005,….
と無限に存在しますし、
「3の倍数どうしの和」にあたる数の組み合わせは、
3+12=?
102+6=?
123456789+234567891=?
のように、 無限に存在するので、
それらを全て書き出して、全部3の倍数になる、ということを計算で説明するのは不可能です。
そこで、中学からひんぱんに使い始めた「文字」を使います。
中学に入ってから、
xとかyとかmとかnとか、文字を使い始めるようになりましたが、
文字が意味するところは、「なんの数字かはわからないけど、なにかの数」です。
イメージとしては、中に何個クッキーが入っているかわからない袋のようなものを思い浮かべてください。
クッキーの数は分からないものの、袋にクッキーが入っていること自体はわかっているので、こういうとき、
「袋のクッキーの数をx個とする」のように、文字を利用して説明します。
たとえば、袋のクッキーを3人に等分する場合、
クッキーの数自体はわからないものの、式をつくること自体は可能です。
「一人当たりにあげるクッキーの数をy個」とすると、式は
x÷3=y
となります。
たとえばクッキーが6個(x=6)なら、
6÷3=y より一人あたりのクッキーの数は2個(y=2)となるし、
クッキーが4個(x=4)なら、
4÷3=y より、一人あたりのクッキーの数は4/3(3分の4、y=4/3)となります。
このように、「文字」を使えるようになると、
なんの数字かわからないあいまいな状況でも、正確に状況を説明ができるようになります。
この「文字」の感覚を身につけることが、中学数学では、なによりも重要です。
さて、今回の例題の問題も、文字におきかえて考えてみます。
例題:「3の倍数どうしの和は、3の倍数になるわけを説明しなさい。」
先ほどのクッキーの袋のたとえでいえば、
数は良く分からない2種類の袋のクッキーを混ぜるイメージでしょうか。
まずは、誤った解答の例を紹介します。
【誤答】
一つ目の3の倍数をm、二つ目の3の倍数をnとする。
このとき、3の倍数どうしの和は、
m+n
mもnも3の倍数なので、m+nも3の倍数となる。
一見正しそうに見えますが、上の解答の間違っている(というより、説明が不十分)な部分は、
「mもnも3の倍数なので、m+nも3の倍数」の部分です。
ここに書かれていることは、問題文(3の倍数どうしの和は、3の倍数になる)と全く同じです。
なので説明になっておらず、不正解となってしまいます。
ではどうすれば良いのか…を解説するために、
2つ、数の性質をおさらいします。
(1)「整数同士を足した数(和)、引いた数(差)、かけた数(積)は整数になる」
たとえば、整数11と整数14の和(25)、差(-3)、積(154)は、いずれも整数です。
このことを文字で置き換えると、
一つ目の整数をm、二つ目の整数をnとすると、
m+n、m-n、m×nは整数となる。
となります。
この性質は、当たり前のこととして数学の問題で扱ってかまいません。
中2の「文字で説明する」問題では、ほぼ必ず利用するので、おさえておきましょう。
(2)倍数
次に、当たり前のように使っている言葉「3の倍数」についての簡単なおさらいです。
「3の倍数」とは、3をかけた整数のことです。
たとえば、3の倍数である、
3,6,9,12,15,18,…は、それぞれ、
1×3,
2×3,
3×3,
4×3,
5×3,
6×3,…と書き直すことができます。
なので、ある3の倍数をaとすると、
a=3×m
となるような整数mが必ず存在します。
これら2つ性質を利用して、例題を実際に解いてみましょう。
例題:「3の倍数どうしの和は、3の倍数になるわけを説明しなさい。」
【解答例】
二つの3の倍数を、文字a,文字bとする。
このとき、a,bは3の倍数なので、
a=3m
b=3n
となる整数m,nが必ず存在する。 (※倍数の性質)
よって、「3の倍数どうしの和」を式にすると、
a+b
=3m+3n
=3(m+n) (※式変形)
m,nは整数であり、
整数同士の和は整数となるので、
m+nは整数となる。 (※整数の性質)
したがって、3(m+n)は整数に3をかけた数なので、3の倍数。 (※倍数の定義)
以上より、3の倍数どうしの和は、3の倍数となる。(説明終)
上の解答の仕方はもっとも丁寧な書き方で、問題集やプリントでは、省略して、次のように書くことが多いです。
【解答例】
m,nを整数とすると、2つの3の倍数は、
3m,3nと表せる。
これらの和は、
3m+3n=3(m+n)
m,nは整数なのでm+nは整数である。
したがって、3の倍数どうしの和は、3の倍数である。(説明終)
いずれの場合も重要なのは、
3m+3n = 3(m+n)
という式変形によって、足した数が3の倍数であることを式で表現していることです。
これが、「言葉で説明する」ではなく、「式で説明する」の意味するところです。
計算問題とちがって、このような説明問題や証明問題は、
ある程度コツをおさえる必要があるので、
自分の書いた解答文が正しいのか、よくわからない場合がほとんどだと思います。
そういう場合は、学校の先生や友だちに解答を見せて、質問することをおすすめします。
もちろん、この掲示板も積極的にご利用ください!
回答は以上となりますが、
もし説明でよく分からないところがあったら、改めて掲示板に投稿してください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。